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昇降機の豆知識

投稿日 2019/01/29
更新日 2024/02/05

防爆とは?電気機器の防爆構造について

防爆とは?電気機器の防爆構造について

防爆とは、爆発性ガスが漏れることを防ぎ、点火源と混ざり合わないように対策をおこなうことです。
工場や事業場で爆発性ガスが漏れ出すと、そこに点火源があれば爆発する可能性があります。
このような危険場所で使用する電気機械器具には、爆発を防止する構造が施された「防爆機器」を使用しなければなりません。

この記事では、防爆についての基礎知識と電気機器の防爆構造について解説します。

防爆・防爆仕様とは

防爆とは、可燃性のガス・蒸気・粉塵などが電気火花などの火種によって着火して発生する、爆発や火災を防止する技術のことです。

爆発性ガスが漏れ出すと、そこに点火源があれば爆発する

またこのような爆発や火災の恐れがある場所を「危険場所」と呼びます。

防爆仕様とは、このような危険場所で電気機器が点火源となり爆発が起きないように防止する構造・対策を施すことを言います。

一言に危険場所といっても、爆発性雰囲気が生成される頻度や持続時間が異なるため、危険の程度に応じて必要とされる防爆構造は異なります。

防爆規格と爆発性雰囲気とは

防爆規格とは、可燃性ガスや蒸気、粉塵などの爆発性雰囲気で使用される電気機器の安全性を確保するために定められた規格です。

爆発性雰囲気とは、可燃性ガスや蒸気、粉塵が空気と一定の割合で混合した状態のことで、火花や静電気などの着火源があると爆発する危険性があります。

そのため、爆発性雰囲気で使用される電気機器には、爆発による事故を防止するための特別な対策が求められます。
防爆規格は、これらの対策を具体的に規定することで、電気機器の安全性を確保することを目的としています。

防爆電気機器とは

防爆電気機器とは、電気機器自体が爆発性雰囲気の着火源とならないことを目的とし、防爆構造を備えた電気機器を指します。
危険場所のような、危険物質の浮遊が避けられない環境下で火災・爆発を防ぐためには、可燃性ガス・蒸気を着火源から引き離すことが重要です。

※電気機器自体を周囲の爆発から守るという意味ではないことを理解しておきましょう。

防爆に関する法律

防爆に関係する法律は下記3つが該当します。
これらの法律により爆発による労働災害防止措置が義務付けられています。

  • 「労働安全衛生法」(厚生労働省所管)
  • 「電気事業法」(経済産業省所管)
  • 「消防法」(総務省所、各自治体消防署)

また使用する防爆機器は、国内で認められた検定に合格する必要性があります。

爆発の危険がある場所の分類

工場電気設備防爆指針(1979)では、危険場所を「特別危険箇所」「第一類危険箇所」「第二類危険箇所」の3つに区分しています。
これらは、爆発性雰囲気が生成される頻度や持続時間によって区分されており以下のように定義されます。

特別危険箇所:0種場所

特別危険箇所は、ゾーン0とも呼ばれ、危険場所の中でも特に危険度が高いとされる場所です。
爆発性雰囲気が通常の状態において、連続し長時間もしくは頻繁に生成されるエリアのことを指します。

以下のような場所が該当します

  • 可燃性液体が保管されているタンクや容器
  • 可燃性ガスが保管されているタンクや容器
  • ガソリンの入ったタンクローリー車や貯蔵タンク

第一類危険箇所:1種場所

第一類危険箇所は、ゾーン1とも呼ばれます。
爆発性雰囲気が通常の状態において、しばしば存在・生成される可能性があるエリアのことを指します。
ゾーン0に比べると、多くの場所にあります。

以下のような場所が該当します

  • 可燃性ガスや蒸気を放出するタンクや容器
  • 屋内または換気ができない状況で、可燃性ガスや蒸気が滞留しやすい場所
  • タンクローリー車の給油口付近

第二類危険箇所:2種場所

第二類危険箇所は、ゾーン2とも呼ばれます。
爆発性雰囲気が通常の状態において、生成される可能性が低いもしくは生成されたとしても短時間であるエリアのことを指します。
もしくは異常な状態において爆発性雰囲気を生成するおそれがあるエリアを指します。

以下のような場所が該当します

  • 1種場所の周辺または隣接する室内で、爆発性雰囲気が生成される場所
  • 危険性料品の容器類が腐食劣化などにより破損して、それから漏出するおそれがある場所
  • 換気装置の故障により、爆発性ガスが停滞して危険雰囲気を生成するおそれがある場所
  • 容器の破損や装置の操作ミスで、爆発性雰囲気が生成されるおそれのある場所
  • タンクローリー車周辺

防爆構造の種類

電気機器の防爆構造は、爆発性雰囲気の存在する場所や使用目的に応じて、主に次の8種類に分類されています。
「危険場所の種類」によって適用可能な防爆構造がそれぞれ定められています。

耐圧防爆構造

構造記号:d
使用可能区域:1種場所、2種場所

全閉構造で、容器内部に侵入した可燃性ガスや蒸気による内部爆発に対して容器が損傷を受けることなく耐え、かつ、容器のすべての接合部又は構造上の開口部を通して外部の爆発性ガスに引火するおそれのないようにした防爆構造です。

着火源となる電気機器をそのまま容器で覆うような構造のため、防爆化が比較的容易であり、他の防爆構造との組み合わせも可能です。
しかし容器自体に強度を必要とするため、機器の質量が大きくなる傾向があります。

またこの構造は、内部爆発は起こってもその爆発によって外部に影響を与えないという構造であるため、爆発の際には内部機器が破損する可能性はあります。

本質安全防爆構造

構造記号:i
使用可能区域:0種場所、1種場所、2種場所

正常時や故障時に発生する電気火花または高温部により爆発性ガスに引火しないことが公的機関の試験などによって確認された防爆構造です。

特別危険箇所に設置することができ、他の防爆構造に比べても軽量で小型になります。
携帯機器以外の電気機器には専用の関連機器や専用の配線が必要となります。
大きな電力を消費する電気機器は、この防爆構造には向いていません。

内圧防爆構造

構造記号:f
使用可能区域:1種場所、2種場所

容器の内部に保護気体(清浄な空気または不活性ガス)を圧入して、外部の圧力よりも大きい値の内圧を保持することによって爆発性ガスが侵入するのを防ぐ防爆構造です。
また可燃性ガスの濃度を爆発下限界より低いレベルに希釈することによって、爆発性雰囲気の生成を抑える防爆構造となっています。

大型電気機器の防爆化に適した構造で、分析計などの他の防爆構造では実現困難な電気機器にも防爆化が可能です。
また、以下のような必要要件が多いのも特徴です。

  • 保護ガス(空気、窒素ガス等)の供給源が必要
  • 一定時間の掃気(置換)操作が必要
  • 内圧低下を検知する保護装置が必要

安全増防爆構造

構造記号:e
使用可能区域:2種場所

正常状態では点火源となる恐れがない電気機器において更に安全度を増加させる防爆構造です。
故障時に発生する電気火花や高温部の発生を防止するように、構造上及び温度上昇について特に安全度を増加した構造になっています。

安全増防爆構造は軽量化が図りやすく、水素やアセチレンなどに適合する爆発等級3の防爆電気機器を製作する場合にも対応できます。
しかし正常運転時には着火源とならない電気機器にしか適用ができないため、防爆化できる機器が限定されます。

油入防爆構造

構造記号:o
使用可能区域:1種場所、2種場所

電気機器の中で、電気火花または気体放電現象「ア-ク」が発生する部分を絶縁油の中に収めて、油面上に存在する爆発性ガスに引火しないにした防爆構造です。

この構造は通常時において着火能力のない電気機器や電気機器の部品に施されます。
本質安全防爆構造に適合するように設計された部品以外では着火能力がないことを評価する必要があります。

特殊防爆構造

構造記号:s
使用可能区域:防爆原理による

「耐圧防爆構造」「油入防爆構造」「内圧防爆構造」「安全増防爆構造」「本質安全防爆構造」以外の構造で、爆発性ガスに引火しない、発火を防止できることが公的機関の試験等によって確認された防爆構造です。

非点火防爆構造

構造記号:n
使用可能区域:2種場所

正常運転中や特定の異常状態の際に、周囲の可燃性物質が存在する雰囲気を発火させる能力のない電気機器に適用する防爆構造です。

こちらの構造は、危険区域としてリスクが低いとされている第二類危険箇所での使用に限定されています。
「簡易防爆」とも呼ばれ、防爆としての保護基準を低減することによって構造や要件の緩和が図られています。

樹脂充填防爆構造

構造記号:m
使用可能区域:0種場所、1種場所、2種場所

火花や高温の熱により爆発性雰囲気に引火させる可能性がある部分が、運転中に発火源とならないように、樹脂の中に囲い込んだ防爆構造です。

電気部品や電子回路などを樹脂で覆うことで防爆化を行い、他の防爆構造との組み合わせも可能です。
また、樹脂自体が筐体を兼ねることもできるため小型化が可能です。
ただし、充填用樹脂の使用環境への適合性を考慮する必要があり、樹脂が筐体を兼ねる場合は静電気への考慮も必要になります。

防爆機器の表示記号の見方

防爆機器の表示記号は、以下のように表されます。

d2G3
防爆構造の種類爆発等級発火度

ここからは、それぞれの項目ごとに記号の意味を見ていきましょう。

防爆構造の種類と記号

防爆構造の種類は、以下の記号で表します。

区分記号
防爆構造の種類耐圧防爆構造d
本質安全防爆構造ia,ib
内圧防爆構造f
安全増防爆構造e
油入防爆構造o
特殊防爆構造s
非点火防爆構造n
樹脂充填防爆構造ma,mb
粉じん防爆普通防じん構造DP
粉じん防爆特殊防じん構造SDP

爆発等級の分類

爆発等級は、以下のように3等級に分類されます。

爆発等級記号スキの奥行25㎜において
最大安全すきまを生ずるスキの最小値
110.6mmを超えるもの
220.4mmを超え0.6mm以下のもの
33a,3b,3c,3n0.4mm以下のもの

発火度の分類

発火度は、以下のように6等級に分類されます。

発火度(記号)発火温度
G1450℃を超えるもの
G2300℃を超え450℃以下
G3200℃を超え300℃以下
G4135℃を超え200℃以下
G5100℃を超え135℃以下
G685℃を超え100℃以下
d2G3
防爆構造の種類爆発等級発火度

ここまでの表を元にこの例の意味を見ていきましょう。
d2G3とは、耐圧防爆構造で、爆発等級2、発火度G3を表しています。
この機器の温度は、発火度G3のガスが爆発する可能性がある200℃以上300℃以下の範囲よりも低いです。その結果、発火度G3だけでなく、発火度G2、G1の爆発性雰囲気中でも使用可能です。さらに、爆発等級2のガスだけでなく、爆発等級1の爆発性雰囲気中でも使用が可能です。

まとめ

いかがだったでしょうか?
防爆とは、爆発性ガスの漏洩を防止し、点火源と混ざり合わないように対策を行うことです。
防爆構造にもいくつかの種類があり、危険場所によって適用可能な防爆構造がそれぞれ定められています。

化学薬品工場に荷物用エレベーターや垂直搬送機を設置する場合などのように、防爆エリアへ昇降機を設置する場合にも、電気機器に防爆構造をもたせる必要があります。

アイニチ株式会社では防爆仕様にも対応しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

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