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昇降機の豆知識
工場や倉庫に荷物用エレベーターの設置を検討している方にとって、労働安全衛生法や諸届け手続きは欠かせない重要な要素です。
荷物用エレベーターは安全性の観点から、厳格な法的要件に従って設置する必要があります。
また事故やトラブルに発展させないためにも、労働安全衛生法を把握し、それに則って管理・届出などをこなすことが重要です。
そこで本記事では荷物用エレベーターに関する労働安全衛生法や、各種諸届について解説していきます。
目次
労働安全衛生法は、労働者の身体と精神の健康を保護し、安全な労働環境を提供するために制定された法律です。
この法律は全12章で構成されており、事業者には労働災害の予防策の実施や違反時の罰則について具体的な規定が含まれています。
企業は法律に基づいて、労働者の安全と健康に配慮しなければなりません。
厚生労働省の調査によると、近年では労働災害の発生件数が増加傾向にあります。
このことからも分かるように、安全配慮の重要性が一層浮き彫りになってきています。
また新型コロナウイルスの流行やメンタルヘルスの問題も企業にとって重要な課題となっています。
企業側はこれらの問題に真剣に取り組み、労働者を守るための適切な対策を講じる必要があります。
次に、この法律の目的やその背後にある背景について解説します。
企業側はこれらのポイントを理解し、法律の趣旨に従って行動することが安全な労働環境を確保する鍵となります。
労働安全衛生法は、労働者の安全と健康を保護し、労働災害や健康被害を防ぎ、安心して労働できる環境を整備するために制定されました。
これらの目的を達成するために、法律は以下の3つの手段を提供しています。
危害防止基準とリスクマネジメントの確立
労働災害を予防するために、危害防止基準の設定とリスクマネジメントの実施が求められます。
従業員の健康障害を未然に防ぎ、健康リスクを予測し、危険防止基準を遵守し、必要な対策を講じることが含まれます。
責任体制の明確化
安全管理者、衛生管理者、産業医などの役割を明確にし、責任体制を確立します。
これにより、事業場内で適切な人材が配置され、労働安全衛生に対する責任が分かりやすくなります。
自主的活動の促進
安全衛生委員会の設置など、自主的な活動を奨励します。
これにより、従業員が安全に関する提案や問題の報告を行い、安全文化を促進できます。
企業はこれらの手段を遵守し、労働者の安全と健康を計画的に保護する責任があります。
労働安全衛生法の成立背後には、高度経済成長期における労働災害の増加が影響しています。
高度経済成長期に、企業は生産性向上のために大規模な設備投資を行い、労働プロセスは労働集約的な方向に変化していきました。
この過程で、未経験の機械を操作する労働者が増加し、年間6,000人の死亡事故が発生するなど、深刻な社会問題が浮き彫りになっています。
労働安全衛生法に従って、これを実施するために「クレーン等安全規則」が定められています。
クレーン等安全規則第144条では、労働安全衛生法第41条にある「検査証の有効期間」について定められています。
したがって、荷物用エレベーターは毎年1回の性能検査を受ける必要があるのです。
エレベーター検査証の有効期間は、1年とする。
出典:クレーン等安全規則第144条
クレーン等安全規則第155条では、前述の年1回の性能検査とは別に「1か月以内に1回の頻度での定期的な自主検査」が義務付けられています。
1.事業者は、エレベーターについては、一月以内ごとに1回、定期に、次の事項について自主検査を行なわなければならない。ただし、一月をこえる期間使用しないエレベーターの当該使用しない期間においては、この限りでない。
一 ファイナルリミットスイッチ、非常止めその他の安全装置、ブレーキ及び制御装置の異常の有無
二 ワイヤロープの損傷の有無
三 ガイドレールの状態
四 屋外に設置されているエレベーターにあつては、ガイロープを緊結している部分の異常の有無2.事業者は、前項ただし書のエレベーターについては、その使用を再び開始する際に、同項各号に掲げる事項について自主検査を行なわなければならない。
出典:クレーン等安全規則
労働安全衛生法で積載荷重1トン以上のエレベーターを設置から使用する際の手順は以下のようになります。
1:エレベーター製造許可申請書にエレベーターの組立図および書面を提出し、
所轄の労働局長に製造許可を受ける
2:所轄の労働基準監督署長にエレベーター設置届を提出する
3:エレベーターの工事・試運転・調整と設置作業をおこなう
4:エレベーター落成検査申請書を所轄労働基準監督署長に提出する
5:落成検査に合格したエレベーターにはエレベーター検査証が交付されます
詳細は労働安全衛生法でのエレベーターを設置から使用する際の流れにて解説を行っております。
労働安全衛生法は、該当するエレベーターに対して「性能評価」を行うことを要求しています。
この性能評価は、年に一度の頻度で実施され、その結果に基づいて「労働安全衛生法の評価済み証明書」が発行されます。
発行される証明書には有効期限が設定されており、毎年性能評価を更新する必要があります。
性能評価の対象は、通常「1トン以上の荷重を積むエレベーター」であり、該当しない場合は次に説明する「通常の評価報告」を取得する必要があります。
性能評価は法的に義務であり、違反した場合、最高で懲役6ヶ月または最大50万円の罰金が科されることが明示されています。
性能評価を受けるエレベーターは、クレーン等安全規則に従い「通常の自己評価」も実施する必要があります。
通常の自己評価は、月に一度程度行われ、ワイヤーロープの損傷や安全装置の異常など、特定の項目を検査します。
労働安全衛生法の適応対象となるエレベーターは「工場などに設置されるエレベーター(一般公衆のために使用されるもの以外)で、積載荷重が0.25トン以上になるもの」と定義されています。
そのため工場や倉庫に導入する荷物用エレベーターも、この労働安全衛生法の対象となります。
エレベーターの管理に必要な届出は、以下4つになります。
各種届出はエレベーターの所有者または管理者が行います。
エレベーターの修理を行う場合や、所有者や建物名が変更になった場合は、所轄行政庁に変更届を提出する必要があります。
これはクレーン等安全規則第163条において定められています。
事業者は、エレベーターについて、次の各号のいずれかに掲げる部分を変更しようとするときは、法第88条第1項の規定により、エレベーター変更届(様式第12号)にエレベーター検査証及び変更しようとする部分(第4号に掲げるものを除く。)の図面を添えて、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
出典:クレーン等安全規則第163条
一 搬器又はカウンターウェイト
二 巻上げ機又は原動機
三 ブレーキ
四 ワイヤロープ
五 屋外に設置されているエレベーターにあっては、昇降路塔、ガイドレール支持塔又は控え
エレベーターを休止させる場合は、所轄行政庁に休止届を提出する必要があります。
これはクレーン等安全規則第167条において定められています。
エレベーターを設置している者がエレベーターの使用を休止しようとする場合において、その休止しようとする期間がエレベーター検査証の有効期間を経過した後にわたるときは、当該エレベーター検査証の有効期間中にその旨を所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。ただし、認定を受けた事業者については、この限りでない。
出典:クレーン等安全規則第167条
エレベーターを再使用する場合は、所轄行政庁へ再使用届を提出する必要があります。
これはクレーン等安全規則第168条において定められています。
1.使用を休止したエレベーターを再び使用しようとする者は、法第38条第3項の規定により、当該エレベーターについて、所轄労働基準監督署長の検査を受けなければならない。
出典:クレーン等安全規則第168条
2.第141条第2項及び第3項の規定は、前項の規定による検査(以下この節において「使用再開検査」という。)について準用する。
3.使用再開検査を受けようとする者は、エレベーター使用再開検査申請書(様式第14号)を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
エレベーターを撤去または廃止する場合は、所轄行政庁へ廃止届を提出する必要があります。
これはクレーン等安全規則第171条において定められています。
エレベーターを設置している者が当該エレベーターの使用を廃止したときは、その者は、遅滞なく、エレベーター検査証を所轄労働基準監督署長に返還しなければならない。
出典:クレーン等安全規則第171条
いかがだったでしょうか。
荷物用エレベーター設置に関する労働安全衛生法や各種諸届を解説いたしました。
荷物用エレベーターを検討中の方へ、労働安全衛生法の理解は設置前の不可欠なステップです。
この法律を遵守することは、労働者の安全を保障し、法的なトラブルを回避する鍵です。
エレベーターの設置前に知っておくべき基本的な規則やポイントを押さえ、安心して設備を導入しましょう。
労働安全衛生法に従うことは、持続可能な労働環境を築く重要な一歩です。
また、各種諸届に関しても届出の提出忘れがないように心がけましょう。