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昇降機の豆知識
エレベーターは縦への移動手段として私たちの生活に欠かせない設備の一つです。
エレベーターが停止すると私たちの生活自体に支障をきたす恐れがあります。
その為、自然災害(地震)でエレベーターが停止してしまったり、あるいはエレベーターの扉に挟まれたり、閉じ込め等の被害が起こらないよう、エレベーターには法律によって耐震基準が設けられています。
対策が不十分なエレベーターではそのような危険な被害が起こる可能性があるので、被害を未然に防ぐためにも最新の基準で改修することをおすすめします。
今回の記事では、時代の経過と共に求められているエレベーターの耐震基準の考え方や安全対策についてまとめました。
今後、商業ビルやマンションのエレベーターの改修や今後の導入において参考にしていただければと思います。
目次
エレベーターの耐震基準とは、過去の地震被害の経験や建築物の構造変化において、機能維持・安全保障という観点から基準が構築され都度見直しが行われています。
管理されてるマンションや商業ビルでご使用しているエレベーターがどの耐震基準を満たしているのか、知っておく必要があるかと思います。
地震発生時にエレベーターに長時間閉じ込められたり、扉に挟まれたりする事故が過去に何度も起こっています。
今後そのような悲惨な事故をできる限り防止するために、エレベーターには【耐震基準】が設けられています。
例えば近年だと2009年(09耐震)にはエレベーターへの安全対策が義務付けられ、2014年(14耐震)には釣合おもりの脱落防止などの耐震性強化にかかわる対策が追加されています。
耐震基準は建築基準法の法改正がある度に見直されており、また時代に応じて耐震基準の目的も変化しています。
時代:~1971年(昭和46年)以前
目的:エレベーターの機能維持
エレベーターの耐震基準は、建築基準法等で規定されていますが、1971年以前は各メーカーの自主的な基準で製造されていました。
時代:1972年(昭和47年)
目的:エレベーターの機能維持
社団法人日本エレベーター協会が「昇降機防災対策標準」を制定し、下記基準を公表しました。
これがエレベーターの公的な耐震基準の始まりとされています。
その後、宮城県沖地震、阪神淡路大地震、新潟県中越地震、東日本大地震を経て、少しずつ耐震基準も変化していきます。
時代:1981年(昭和56年)※宮城県沖地震を受けて
目的:エレベーターの機能維持
財団法人日本建築センターが「エレベーター耐震設計・施工指針」を公表しました。
その年の下二桁をとって「81耐震」と呼んでおり、今後も同様の名称が付けられています。
旧耐震基準を更に具体的に規定し、下記防止対策の強化を施しています。
時代:1998年(平成10年)※兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)を受けて
目的:エレベーターの機能維持・破損防止
財団法人日本建築設備・昇降機センターが「昇降機耐震設計・施工指針」を公表しました。
81耐震に加え、更に下記基準を設けています。
時代:2009年(平成21年)※新潟県中越地震、千葉県北西部地震を受けて
目的:人命最優先・安全走行
2009年に建築基準法改正により、耐震基準の目的がそれまでの「機能維持・破損防止」から「人命最優先・安全走行」へと変わりました。
それに伴い、エレベーターへの安全対策として下記基準が設けられています。
これらの安全対策に関しては詳しく後述いたします。
時代:2014年(平成26年)※東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)を受けて
目的:人命最優先・安全走行・耐震性強化
東日本大震災時、エレベーターの釣合おもりの脱落が多数みられました。
地震時における安全強化の為2014年に改正された最新の耐震基準です。
下記3点が制定されています。
新潟県中越地震、千葉県北西部地震を受けて、更なるエレベータの安全性の向上が求められる中、2009年9月に施行された建築基準法改正により、エレベーターの安全対策として以下が義務付けられるようになりました。
駆動装置または制御機器に故障が発生し、万が一エレベーターのドアが開いた状態で動き出した場合でも、すばやく検知しエレベーターのドアが開いた状態で動かないようにする安全装置です。
具体的には下記3点を満たした装置の事を指します。
片方のブレーキが故障しても、もう片方のブレーキを使用することで安全にかごを停止できる。
ドアの開閉状態を検出するセンサーに加え、かごが乗場から一定距離以上移動した場合に感知する特定距離感知装置を設けることにより戸開走行を検出する。
通常制御プログラムが故障しても、安全にエレベーターを制御して停止させることができる。
地震時管制運転装置の地震感知器には、初期微動(P波)を感知するP波感知器と本震(S波)を感知するS波感知器の2種類があります。
地震発生時、強く揺れる本震(S波)が来る前の初期微動(P波)を感知すると強制的にかごを最寄り階に停止させ、ドアを開き利用者の閉じ込めを防止します。
さらに本震(S波)を感知したときにはエレーベーターを休止し、機器の破損を防止します。
地震発生後に停電しても、予備電源があるとエレベーターを地震時管制運転装置で最寄り階に着床させることができ、閉じ込めを防止できます。
停電を検知した場合に動力電源をバッテリー(無停電電源装置(UPS))に切り替え、自動的にエレベーターを最寄り階まで運行して閉じ込めを防止します。
自家発電設備のない建物においても同様です。
停電時自動着床装置があることで地震時管制運転装置を作動させることも可能な為、利用者の閉じ込めを防止し安全確保を最優先できます。
地震発生時におけるエレベーターの耐震構造を強化することにより、地震による被害を低減させます。
エレベーターの早期復旧と利用者の安全確保、早期救出を可能にします。
81耐震 | 98耐震 | 09耐震 | 14耐震 |
---|---|---|---|
脱レール防止対策 機械室機器の転倒、移動防止 レール、レールブラケット補強 昇降路内突起物保護 主策の外れ止め | 脱レール防止対策 機械室機器の転倒、移動防止 レール、レールブラケット補強 昇降路内突起物保護 主策の外れ止め おもりブロック脱落防止 懸垂機器の転倒、移動防止 | 脱レール防止対策 機械室機器の転倒、移動防止 レール、レールブラケット補強 昇降路内突起物保護 主策の外れ止め おもりブロック脱落防止 懸垂機器の転倒、移動防止 長尺物振れ止め対策強化 ガイドレール、レールブラケット強化 | 脱レール防止対策 機械室機器の転倒、移動防止 レール、レールブラケット補強 昇降路内突起物保護 主策の外れ止め おもりブロック脱落防止 懸垂機器の転倒、移動防止 長尺物振れ止め対策強化 ガイドレール、レールブラケット強化 ガイドレール、釣合おもりの強度評価方法を規定 |
エレベーターを安全に使ってもらえるようにビル管理者が守るべき基準は以前からありますが、現在基本的に新しく設置するエレベーターには、前述した09耐震基準の下記安全対策が義務付けられています。
エレベーターを設置したときは基準を満たしていたが、法改正によって基準が変わり現在は基準を満たさなくなったエレベーターを「既存不適格」と呼びます。
これは定期検査時において指摘されることはありますが、違法になることはありません。
ですがこの既存不適格のエレベーターの改修を行う際、改修内容によっては最新の基準に合わせて改修する必要があります。
より詳細な内容については「エレベーターの既存不適格とは」をご参照下さい。
※当社運営のメンテナンス・保守点検サイトに移動します。
自治体によってはエレベーターの安全対策改修のための補助金を用意しているところもあります。
補助金を利用することで費用の削減につながりますので、一度最寄りの自治体に問合せを行ってみるのも良いでしょう。
一例としては既存不適格エレベーターに対し下記対策を行うことで補助金が下りるといったものです。
【エレベーター防災対策改修工事】
※弊社では補助金・助成金関係はお答えできません。
最寄りの自治体へ、まずはお問合せください。
エレベーターの耐震基準は、地震や事故が起こるたびに進化してきました。
特に2009年に改正された09耐震では、「エレベーターの機能維持」から「人命最優先」に重きを置くようになり、よりエレベーターの安全対策は強化されました。
海外メーカーが市場に入り込む余地がほとんどない程、日本のエレベーターの安全対策基準のレベルは高い状態になっています。
しかしどれほど安全装置を取り付けようと、絶対という言葉がないように100%安全というわけにはいきません。
身の回りには様々な耐震基準のエレベーターがあり、普段何気なく使っているエレベーターや、お住いのマンションのエレベーターがどの耐震基準を満たしているのか知る事や、定期的なメンテナンスや、エレベーターに対する知識を更新することも非常に大事です。
いざという時のために、緊急時の対応方法などもしっかり把握しておくと良いでしょう。