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昇降機の豆知識
人や荷物を移動させるために利用される「エレベーター」は、用途に応じてさまざまなタイプが存在します。
その中の一種として「小型エレベーター」と呼ばれるものがあります。
小型エレベーター(小規模建物用小型エレベーター)は、「利用者がある程度限定されている小規模な建築物」に設置することを目的とし開発されたエレベーターです。
業務用エレベーターでは設置スペースが確保できなかったり、ホームエレベーターは設置ができないなど、このような問題を抱える老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅といった福祉施設などの小規模な建築物に最適なエレベーターです。
実際に導入するとなると具体的な定義について把握しておく必要があるでしょう。
本記事では、小型エレベーターの定義や設置条件、導入前の注意点などを詳しく解説します。
目次
本来通常のエレベーターでは、カゴの種類に応じて積載荷重が定められています。
小型エレベーターのような特殊エレベーターでは「積載荷重に対しての基準」が緩和されています。
つまり「小型エレベーター」は「積載荷重の条件を緩和された特殊なエレベーター」と言えます。
積載量200kg以下
小型エレベーターの積載荷重は、一般の乗用エレベーターより緩和が適用されたものです。
「建築基準法施行令第129条の5第2項」に記載の表による積載荷重を用いる代わりに、「用途が特殊なエレベーターで国土交通省が定めるもの」として、「平成12年建設省告示1415号3号」に記載されている積載荷重を適用しています。
これにより一般の乗用エレベーターよりも緩和が適用された積載荷重を定めることができます。
具体的には、定格積載荷重200kgという軽い積載量で、カゴの床面積は車いす利用者とその介助者が同時に乗車できる広さを確保することが可能になります。
利用者がある程度限定されている小規模な建築物であること
出典:一般社団法人日本エレベーター協会標準JEAS-712(標12-02)
比較的に使用頻度が少なく、利用者が限定されている前提で計画された建築物または建築レイアウトや運行管理において、利用者および使用をある程度限定する配慮がなされた建築物である必要があります。
たとえば、具体的な建築例として福祉施設、集会場(教会、寺院含む)、診療所、学校などが挙げられます。
カゴの積載荷重が一般の乗用エレベーターより緩和されているので、乗りすぎのおそれのある雑居ビルや事務所ビル等には小型エレベーターではなく、一般の乗用エレベーターで計画したほうがよいでしょう。
1)1日の使用頻度がホームエレベーターと同等もしくは製造者が設定した使用回数以下であること。(カタログ、取扱説明書などに明示する)
出典:一般社団法人日本エレベーター協会標準JEAS-712(標12-02)
2)利用者は、運行管理者の管理のもとに利用すること。
小型エレベーターは、1日の使用回数が一般乗用エレベーターに比べて少ないことを前提とし、
ホームエレベーターと同様の構造・仕様等に基づいて設計されています。
そのため、ホームエレベーターと同様の使用回数、もしくは製造者が設計した使用回数以下である必要があります。
また、製造者は設定した使用回数をカタログ、取扱説明書などに明示しておきます。
また、小型エレベーターの主な設置目的は、高齢者、障がい者、要介護者、患者等の階段利用が困難な方の支援を想定しています。
そのため、運行管理者の管理のもとにエレベーター利用ができる環境が必要です。
運行管理者の管理とは、運行管理者が常駐し管理する場合やキースイッチ等による利用者限定等の管理のことをいいます。
所有者等は、運行管理者を選任すること
出典:一般社団法人日本エレベーター協会標準JEAS-712(標12-02)
所有者等は、エレベーターの運行管理者を選任し、管理を行う必要があります。
また運行管理者は、定員や製造者が設定した使用回数等を正確に理解しておく必要があるため運行管理規定等を定める必要があります。
「一般社団法人日本エレベーター協会標準JEAS-712(標12-02)」において、小型エレベーターは以下のような設置条件の標準が定められています。
定員 | 3名以下 |
積載量 | 200kg以下 |
昇降行程 | 10m以下 |
かご床面積 | 1.3㎡以下 |
内装材 | 基本的に難燃材を使用 |
法定積載荷重 | 1800N/㎡ |
設置できる場所 | 利用者がある程度限定される小規模な建築物 (福祉施設、協会、診療所、学校など) |
小型エレベーターと似たものに「ホームエレベーター」があります。
小型エレベーターとホームエレベーターとの違いに関しては「小型エレベーターとホームエレベーターの違い」の記事で詳しく解説をしていますので参考にしてみてください。
令和6年8月にパナソニックより小規模共同住宅向けに、省スペースで設置でき、木造建築にも対応した新しいエレベーターが発売されました。
このエレベーターは、シンプルな構造で短工期・低コストを実現しており、アパートやマンションの入居率向上に貢献します。
屋内への設置と管理責任者の選定が条件ですが、動力電源契約は不要で、防火設備の別途併設も不要な点が特徴です。
業務用エレベーター | 小規模共同住宅用 エレベーター | 小型 エレベーター | ホーム エレベーター | |
---|---|---|---|---|
種別/人数 | 6人乗り以上 ・乗用エレベーター ・寝台用エレベーター ・荷物用エレベーター ・住宅用エレベーター ・非常用エレベーター | 3人乗り (250㎏) | 3人乗り (200㎏) | 3人乗り以下 |
設置用途 | ・高、中、低層用ビル ・事務所ビル ・店舗ビル ・マンション ・病院 ・駅 ・工場、倉庫など | ・アパート ・賃貸マンション | ・福祉施設 ・診療所、医院 ・教会 ・保育園 ・集荷所 ・寺院、神社など | ・個人専用住宅 ・店舗付き専用住宅 ※店舗(共用部分)と住宅を区画する必要があります。 |
小型エレベーターの価格相場は、業者に見積もりを依頼する必要があるため、参考情報は限られていますが、例えばパナソニックの小型エレベーターでは300万円台~という希望小売価格が提示されています。
実際に設置する際には、本体価格に加えて工事費用やその他の諸費用がかかるため、具体的な費用総額を確認するには業者への問い合わせが必要です。
特に、4階建てや5階建ての小規模ビルの場合、業務用エレベーターの設置には2,300万~と高額な費用がかかることを考慮すると、3人乗りの小型エレベーターが適しており、400万~で設置できるため、コストパフォーマンスの高い選択肢となります。
ただし、設置には管理責任者を任命する必要がある点にも注意が必要です。
小型エレベーターの導入に際して、基本的に以下の3つの初期費用が発生します。
もちろん、状況によって費用は変動することがありますが、大まかな金額を理解していただくため、それぞれの相場を参考価格としてご紹介いたします。
小型エレベーターの本体価格は、300万円~と幅広い価格帯で設定されています。
この価格帯は、エレベーターの大きさ、材質、昇降方式、設置する建物の構造など、様々な要因によって変動します。
初期費用の大部分を占めるため、エレベーターを選ぶ際には、本体価格をしっかりと把握しておくことが重要です。
小型エレベーターの設置工事費用は、建物の構造や設置場所、エレベーターのサイズなどによって異なりますが、概ね40万円~程度が相場とされています。
この費用には、基礎工事、配線工事、建物の補強工事などが含まれます。
ただし、一部のメーカーでは、本体価格に設置費用が含まれている場合もあります。
小型エレベーターの設置には、建築確認申請が義務付けられており、この申請費用は10万円から15万円程度が相場です。
ただし、増築を伴う場合や、防火地域など、建物の条件によって、建物自体の確認申請が必要となるケースもあります。
申請費用は、都道府県や市区町村によって異なり、建築物の種類によっても変動しますので、事前に管轄の行政機関へお問い合わせください。
小型エレベーターを導入する際は、設置後にかかる維持費も確認しておくことが重要です。小型エレベーターの運用には、以下のようなランニングコストが発生します。
それぞれの目安を見ていきましょう。
小型エレベーターの電気代は、使用頻度、昇降回数、エレベーターの性能など、様々な要素によって左右されます。
1日10回程度の一般的な利用を想定した場合、月々の電気代は500円~が目安となります。
これは、年間で約1万円前後の費用に相当します。
なお、設置時に電気容量を増やす必要がある場合は、基本料金も上昇するため、トータルの電気代は増加する可能性があります。
小型エレベーターの駆動方式には、油圧式とロープ式の2種類がありますが、油圧式の場合、作動油の劣化を防ぐために、5年ごとにおよそ5万円~の費用をかけてオイル交換を行う必要があります。
小型エレベーターの安全な利用を継続するためには、定期的な保守管理が重要です。
保守契約を結ぶことで、専門業者による点検や部品交換などが受けられます。
費用は、エレベーターの機種や契約内容によって異なりますが、年間で5万円~が一般的な目安です。
契約時には、点検項目、部品交換の頻度、緊急時の対応など、契約内容を詳細に確認することをおすすめします。
小型エレベーターを設置すると、建物の一部として固定資産税の対象となり、毎年税金を納める必要があります。
税額は、エレベーターの価格や建物の評価額などによって変動しますが、一般的には年間約2万円~が目安です。
小型エレベーターを導入するにあたって注意点がいくつかあります。
小型エレベーターは、通常の乗用エレベーターと比較しても特殊なエレベーターです。
その為メーカーや機種によっては使用上の条件が設けられていたり、それぞれ異なることがあります。
これら提示されている条件については必ず遵守する必要があります。
メーカーが提示するということは、安全上必ず必要であるということです。
小型エレベーターを導入する際には、メーカーに「使用環境」や「使用用途」を明確に伝えて、小型エレベーターが適しているかどうか判定しましょう。
小型エレベーターは通常のエレベーターよりも1日の使用頻度や積載荷重が低く設計されているため、
場合によっては小型エレベーターではなく乗用エレベーターが適している場合があります。
通常のエレベーター同様、建築基準法第12条の3項に基づく定期検査が必要です。
6ヶ月から1年ごとに、検査者による検査を実施した後、定期検査報告書を作成し、特定行政庁に報告する義務があります。
旧法第38条は、建築基準法が想定していない特殊な建築材料や構造方法などを採用した建築物を認める例外的な規定です。
日本建築センターのような第三者機関の試験を受け、安全性などが建築基準法の規定と同等以上の効力を持つと認定されれば、本来は建築基準法の規定に当てはまらない特殊な設計であっても建築が認められるという内容です。
現在ではこの旧法第38条の認定に関しては無くなっていますが、各エレベーターメーカーでは自主的にこの旧法第38条認定の基準を踏襲しています。
しかし工務店や設計事務所がその辺りを考慮せずに建築確認を出してしまうケースがありますが、最終的には、建築主事等の判断となりますが、小型エレベーターの特徴(福祉目的・使用頻度制限・管理責任者の下で使用等)を良く理解した上で導入することが重要です。
いかがだったでしょうか。
似たようなエレベーターでも基準が明確に分かれています。
・通常のエレベーターから積載荷重の条件を緩和したものが「小型エレベーター」
・小型エレベーターから設置場所を住戸内のみに制限したものが「ホームエレベーター」
小型エレベーターは、緩和された条件で設置することができますが、メーカーや機種によっては別途使用条件などが設けられている場合もあります。
使用環境や使用用途によっては通常のエレベーターの方が適している場合もありますので、小型エレベーターを導入する際には業者様と検討を重ね、問題がないか判断することをおすすめします。
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