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昇降機の豆知識
エレベーターは安全のために、”定期検査報告”と”保守点検”をしなければなりませんが、この2つの意味の違いは何でしょうか?
どちらも「エレベーターが正常に動作しているかチェックする」という点では変わりありませんが、大きな違いがあります。
目次
定期検査報告とは、建築基準法第12条の3項に基づく検査です。
定期検査では、検査者(一級建築士または二級建築士または昇降機等検査員)がおおむね6ヶ月~1年ごと(※1)に、「エレベーターが国土交通大臣が定める基準(※2)に適合しているかどうか」を調べます。
そして、定期検査の結果に基づいて、定期検査報告書を作成し、特定行政庁に報告する義務があります。
このとき作成された「定期検査の記録」は3年以上保管するものとされています。(昇降機の維持及び運行の管理に関する指針)
(※1)多くの特定行政庁では、1年ごとと定めています。
(※2)国土交通大臣が定める基準(検査の項目、方法、判定基準)は、平成20年国土交通省告示第283号に記述されています。
定期検査報告は、「定期報告を扱う地域法人」が「エレベーターの所有者または管理者」に定期検査報告の通知をすることから始まります。
詳しくは、『エレベーターの定期検査報告の流れ』をご覧ください。
定期検査報告を行ったエレベーターには、(一財)日本建築設備・昇降機センターが制定した「定期検査報告済証」が配布されます。
▲定期検査報告済証
定期検査報告済証の役割
利用者に、エレベーターが建築基準法に基づき定期検査報告を実施していることを知らせ、「安全」「安心」「信頼」を提供する役割があります。一般的に、エレベーターのかご内の操作盤上部の見えやすい位置に貼られています。
定期検査報告の実施について
(報告、検査等)
3 昇降機及び第六条第一項第一号に掲げる建築物その他第一項の政令で定める建築物の昇降機以外の建築設備(国、都道府県及び建築主事を置く市町村の建築物に設けるものを除く。)で特定行政庁が指定するものの所有者は、当該建築設備について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は国土交通大臣が定める資格を有する者に検査(当該建築設備についての損傷、腐食その他の劣化の状況の点検を含む。)をさせて、その結果を特定行政庁に報告しなければならない。
出典:建築基準法12条の3項
定期検査報告の報告時期について
(建築設備等の定期報告)
第六条 法第十二条第三項 (法第八十八条第一項 又は第三項 において準用する場合を含む。以下この条において同じ。)の規定による報告の時期は、建築設備、法第六十六条 に規定する工作物(高さ四メートルを超えるものに限る。)又は法第八十八条第一項 に規定する昇降機等(以下「建築設備等」という。)の種類、用途、構造等に応じて、おおむね六月から一年まで(ただし、国土交通大臣が定める検査の項目については、一年から三年まで)の間隔をおいて特定行政庁が定める時期(法第十二条第三項 の規定による指定があつた日以後の設置又は築造に係る建築設備等について、設置者又は築造主が法第七条第五項 又は法第七条の二第五項 の規定による検査済証の交付を受けた場合においては、その直後の時期を除く。)とする。
出典:建築基準法施行規則第6条の1項
エレベーターの定期検査報告では、検査の項目ごとに「要是正」「重要点点検」「指摘なし」の3段階の判断がされます。
それぞれの意味は次のとおりです。
要是正 | 修理や部品の交換等により是正することが必要な状態 (速やかに是正する必要あり) |
---|---|
重要点点検 | 次回の検査までに「要是正」に至るおそれが高い状態 |
指摘なし | 要重点点検及び要是正に該当しない良好な状態 |
「要是正」と判断された場合、エレベーターの所有者等は速やかに是正する必要があります。もし、是正をしなかった場合、特定行政庁によって、是正状況の報告聴取や是正命令が行われます。
また場合によっては、罰則規定により罰金を支払う可能性があります。
おおむね年1回の定期検査報告で「要是正」と判断されないために”保守点検”が必須となります。
エレベーターの定期検査・報告を行わなかったり、虚偽の報告を行った所有者等に対しては、建築基準法第101条と102条に罰則規定が設けられています。
第百一条 次の各号のいずれかに該当する者は、百万円以下の罰金に処する。
出典:建築基準法第101条
二 第十二条第一項又は第三項(これらの規定を第八十八条第一項又は第三項において準用する場合を含む。)の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者 第百二条 次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。
四 第十二条第五項(第四号を除き、第八十八条第一項から第三項までにおいて準用する場合を含む。)、第六十八条の二十一第一項(第八十八条第一項において準用する場合を含む。)、第七十七条の三十一第一項又は第八十六条の八第四項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
定期報告を提出しなかったり、虚偽の報告をした場合は、100万円以下の罰金処分を受ける可能性があります。罰金という行政処分もありますが、なにより社会的信用の低下に繋がるかもしれません。
保守点検とは、建築基準法第8条に基づく点検です。
専門技術者が、使用頻度に応じて「エレベーターに異常がないかどうか」を調べます。
保守点検の記録は3年以上保管するものとされています。(昇降機の適切な維持管理に関する指針)
保守点検の目的は、法令(建築基準法第8条「維持保持」)の遵守、つまり昇降機の”性能維持”と”安全保持”です。
また、定期検査報告で「要是正」の判断を受けないようにするためでもあります。
人を乗せるエレベーターは、不具合が発生すると、人の命に関わる事故が発生する恐れがあります。
例えば、電気系統や扉開閉装置の故障による「閉じ込め事故」、巻上機ブレーキ制御の不具合による「段差発生・転倒事故」と「人が挟まる事故」などです。
エレベーターを使用していると、部品の摩耗や破損により性能が低下します。(例:乗り心地が悪くなるなど)
また、定期的な点検を怠ると、部品の寿命が短くなり、通常より部品を早く交換する必要が発生します。例えば、グリスが不足して、ガイドレールとガイドシューの摩擦が大きくなると、部品の劣化が早くなります。
保守点検の実施と記録期間について
(維持保全)
出典:建築基準法第8条
第八条 建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない。
第6 文書等の保存・引継ぎ等
出典:昇降機の適切な維持管理に関する指針
2 所有者は、(中略)定期検査報告書等の写しその他保守点検業者が適切に保守・点検を行うために必要な文書等を3年以上保存するものとする。
最後にエレベーターの定期検査報告と保守点検の違いをまとめると次のとおりです。
定期検査報告 | 保守点検 | |
---|---|---|
法令 | 建築基準法第12条の3項 | 建築基準法第8条 |
内容 | エレベーターが国土交通大臣が定める基準に適合しているかどうかを調べる | エレベーターに異常がないかどうかを調べる(安全保持・性能維持) |
作業者 | 一級建築士または二級建築士または昇降機等検査員(旧:昇降機検査資格者) | 専門技術者 |
時期 | おおむね6ヶ月~1年ごと | 使用頻度に応じて |
記録の保管期間 | 3年以上 | 3年以上 |
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