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昇降機の豆知識
「メンテナンス業者から『サーマルリレーの交換が必要です』と言われたけれど、そもそも何のための部品なの?」
「リフトが動かなくなり、制御盤を見たら『サーマル動作』のランプが点いている。リセットしても大丈夫?」
工場や倉庫で簡易リフトやエレベーターを管理されている方にとって、聞き慣れない専門用語によるトラブル報告は、大きな不安の種ではないでしょうか。
「このまま使い続けても安全なのか」「修理費用はいくらかかるのか」と心配になるのも無理はありません。
実は、この「サーマルリレー」は、昇降機の心臓部である「モーター」を焼き付き故障から守る、非常に重要な安全装置です。
もしこの装置の警告を無視して使い続けたり、適切な処置を怠ったりすると、最悪の場合、モーターが故障し数百万円規模の修理費用が発生する事態にもなりかねません。
この記事では、サーマルリレーの基礎知識から、作動してしまう3つの主な原因、そして安全に復旧させるための正しい対処法までを、昇降機の専門家が分かりやすく解説します。
頻繁にトラブルが起きている場合の「根本的な解決策」もお伝えしますので、ぜひ設備の安全管理にお役立てください。
目次
サーマルリレーは、正式名称を「熱動継電器(ねつどうけいでんき)」といい、主にモーター(電動機)を使用する設備に組み込まれている保護装置です。
ここでは、その基本的な役割と仕組みについて解説します。
一言で言えば、サーマルリレーとは「モーターに無理な力がかかった時に、自動的に電気を遮断してモーターが壊れるのを防ぐ装置」です。
家庭の電気でいう「ブレーカー」や「ヒューズ」に近い役割を果たしています。
エレベーターやリフトのモーターは、定員オーバーや機械の不調などで動きが重くなると、普段よりも多くの電気(過電流)を必要とします。
この状態を「過負荷(オーバーロード)」と呼びます。
過負荷の状態が続くと、モーターは異常に発熱し、最終的には内部のコイルが焼き付いて動かなくなってしまいます(これを「焼損」と言います)。
サーマルリレーは、この「危険な電流」を感知すると、スイッチを切ってモーターを強制停止させ、モーターが焼き切れるという最悪の事態を未然に防いでいるのです。
では、どうやって「電流が多い」ことを感知しているのでしょうか?
サーマルリレーの内部には、「バイメタル」と呼ばれる特殊な金属板が入っています。
このように、「熱」を利用して動くため、「熱動」継電器と呼ばれています。
よく似た役割を持つ機器に「配線用遮断器(ブレーカー)」や「ショックリレー」がありますが、それぞれ守備範囲が異なります。
| 比較項目 | サーマルリレー | 配線用遮断器(ブレーカー) | ショックリレー |
|---|---|---|---|
| 主な役割 | モーターの保護 | 電線(回路全体)の保護 | モーターや機械の保護 |
| 得意な異常 | 過負荷(じわじわくる熱) | 短絡(ショート)などの大電流 | 瞬時の過電流や拘束 |
| 仕組み | 熱(アナログ式) | 熱や磁気 | 電流監視(電子式) |
| コスト | 安価 | 普通 | 高価 |
リフトやエレベーターでは、コストパフォーマンスに優れ、モーターの熱特性(じわじわ熱くなる性質)と相性が良いサーマルリレーが最も一般的に採用されています。
なぜ、工場の簡易リフトや飲食店のダムウェーターには、このサーマルリレーが必要不可欠なのでしょうか。
昇降機ならではの事情を解説します。
昇降機は、「重い荷物を上下させる」という、モーターにとって非常に過酷な仕事をしています。
さらに、荷物の重さは毎回異なり、積み方によっては機械に予想外の負荷がかかることもあります。
もしサーマルリレーがなければ、無理な運転を続けた結果、モーターから煙が出たり、最悪の場合は火災に繋がったりする危険性があります。
これを防ぐための最後の砦がサーマルリレーなのです。
サーマルリレーが作動する(トリップする)ということは、「これ以上動かすと危険です」という機械からのSOSです。
このような異常が発生した際に、サーマルリレーが瞬時に停止させることで、ワイヤーロープの破断や、カゴの落下といった人命に関わる重大事故を未然に防いでいます。
「何もしていないのに止まった!」と思うかもしれませんが、サーマルリレーが作動するには必ず理由があります。
現場でよく見られる主な原因は以下の3つです。
最も多い原因がこれです。
最大積載量(〇〇kg)を超えた荷物を載せてボタンを押すと、モーターは重いものを持ち上げようとして大量の電流を消費し、サーマルリレーが作動します。
また、重量オーバーでなくても、荷物が片寄って積まれていると、ガイドレールとの摩擦が大きくなり、モーターに余計な負荷がかかって作動することもあります。
昇降路(リフトが通る縦穴)の中で、何らかの物理的なトラブルが起きているケースです。
このように機械が物理的にロック(拘束)されている状態で無理やりモーターを回そうとすると、急激な過電流が流れ、保護装置が作動します。
「荷物は載せていないのに止まる」という場合は、電気系統やモーター自体のトラブルが疑われます。
これらは経年劣化による設備の寿命である可能性が高いです。
もし、管理しているエレベーターやリフトが停止し、制御盤の「サーマル」ランプが点灯していた場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
一番やってはいけないのが、「原因を確認せずに、とりあえずリセットボタンを押して再稼働させる」ことです。
サーマルリレーが作動したということは、必ず「異常」があります。
バイメタルが熱くなっている状態で無理やり復旧させると、モーターにさらなる熱ダメージを与え、トドメを刺して完全に焼き切ってしまう可能性があります。
まずは以下の点を目視で確認してください。
原因が「過積載」や「荷物の引っかかり」であれば、それを取り除いた後、制御盤内のサーマルリレー本体にある「RESET(リセット)」ボタン(青色や赤色のポッチ)を押すことで復旧できます。
(※必ず電源を切ってから操作するか、感電に十分注意してください。不明な場合は業者に依頼してください)
リセットして動き出しても、すぐにまた「ガチャッ」と音がして止まってしまう。
あるいは、数日おきに頻繁に作動を繰り返す。
この場合は、重度の故障が発生している可能性が極めて高いです。
絶対に無理に動かそうとせず、直ちに使用を中止し、専門のメンテナンス業者に連絡してください。
これ以上操作を続けると、高額な修理が必要になる故障へと発展します。
「リセットすれば動くから」といって、頻繁に作動する状態を放置して使い続けていませんか?
それは非常に危険な行為です。
サーマルリレーが頻繁に作動するということは、モーターが常に「悲鳴を上げている」状態です。
これを無視して使い続けると、いずれモーターが焼き付き、完全に動かなくなります。
そうなると、数万円の部品交換で済んだはずが、モーター交換(数十万円)や、それに伴う付帯工事が必要になり、修理費用が跳ね上がります。
また、部品取り寄せのために長期間リフトが使えなくなり、業務に多大な影響が出ます。
「サーマルリレーが壊れているんじゃないか?」と疑う方もいますが、実際にはその他の部品(マグネットスイッチ、モーター、配線など)の劣化が原因であるケースが大半です。
サーマルリレーの作動は、「サーマルが悪い」のではなく、「設備全体が古くなってきて、危険な状態ですよ」という制御盤全体からのSOSサインと捉えるべきです。
古い設備(設置から20年以上など)の場合、不具合が出るたびに部品をちまちまと交換するよりも、制御盤ごと新しくする「制御リニューアル」の方が、長期的にはコストを抑えられ、安全性も飛躍的に向上します。
| 比較項目 | 部品交換(対症療法) | 制御盤リニューアル(根本治療) |
|---|---|---|
| 費用 | 1回あたりは安い | まとまった費用が必要 |
| リスク | 別の部品が次々と壊れる可能性大(いたちごっこ) | 主要な電気部品が一新され、故障リスク激減 |
| 安全性 | 現状維持(古いまま) | 最新の安全基準に対応(安全性向上) |
| 部品供給 | 古い部品は入手困難な場合あり | 最新部品のため供給も安心 |
| おすすめ | 設置から10年〜15年未満の場合 | 設置から20年以上経過している場合 |
最後に、サーマルリレーに関して現場の方からよくいただく質問にお答えします。
サーマルリレーの製品寿命は、使用環境にもよりますが、一般的に約10年〜15年程度と言われています。
交換費用の相場は、部品代と技術料を含めて数万円程度ですが、機種や業者の出張費によって異なります。
制御盤の点検と合わせて見積もりを取ることをお勧めします。
絶対にやめてください。
サーマルリレーには、作動する電流値を決めるダイヤル(ツマミ)が付いていますが、これはそのモーターの定格電流に合わせて厳密に設定されています。
「すぐ止まるから」といって設定値を勝手に上げると、過負荷になっても作動しなくなり、モーターが焼損して火災の原因になります。
点検業者から「サーマルリレーやマグネットスイッチが古くなっているので交換しましょう」と提案された場合、基本的には受け入れることを強く推奨します。
これらの部品は消耗品です。
万が一、故障して「過負荷を検知できない状態」になってしまうと、安全装置としての意味がなくなり、高額なモーター故障を招く恐れがあるからです。
「保険」だと思って早めに交換するのが賢明です。
この記事では、サーマルリレーの役割から、作動する原因、そして頻繁に作動する場合の根本的な対策について解説しました。
最後に重要なポイントを振り返ります。
サーマルリレーの不具合は、エレベーターやリフトからの「もう限界だよ」という悲鳴かもしれません。
そのサインを見逃さず、適切な処置をすることが、事故を防ぎ、トータルの維持費を抑えることにつながります。
「最近、よくリフトが止まる…」
「古い設備なので、一度プロに見てもらいたい」
「業者の見積もりが適正か相談に乗ってほしい」
もし、昇降機のトラブルでお困りでしたら、ぜひ一度、私たちアイニチ株式会社にご相談ください。
私たちは、簡易リフトやエレベーターのメンテナンス・改修において豊富な実績を持つ専門家集団です。
お客様の設備の状況を正確に診断し、単なる部品交換から制御リニューアルまで、最も費用対効果の高い解決策をご提案いたします。
ご相談・お見積もりは無料です。まずはお気軽にお問い合わせください。