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昇降機の豆知識
ワイヤーロープは強度と柔軟性を備えており、 国内外問わず様々な分野で活躍しています。
私たちがよく利用する一般的なものだと、エレベーターなどに使用されています。
非常に重量のある物を支えることができるワイヤーロープだからこそ、その強度が低下してしまうと非常に危険です。
本記事では、ワイヤーのキンクや素線切れについて解説いたします。
どちらもワイヤーロープの強度に関する重要な内容です。
発生原因や直し方、対応方法など適切な対処方法を知ることで、ワイヤーロープの安全性と耐久性を確保することができます。
長く安心してご使用いただくための参考になればと思います。
目次
ワイヤロープとは、鋼の細線(素線)を撚って束ねた小縄(ストランド)とし、そのストランドを繊維芯のまわりに複数本撚り合わせて作ったロープのことを指し、非常に高い強度と柔軟性を備えています。
ガードレールや、橋梁といった構造物、エレベータやクレーンのような荷役機械まで、幅広い用途に使用されています。
ストランドの本数や構造、撚り方などにより強度が異なります。
素材はステンレスやスチールであることが多く、以下のような特性を持っています。
ワイヤロープを構成するおもな材料としては、下記のものがあります。
(1)素線の材料 | 硬鋼線材のSWRH52A~82B ピアノ線材のSWRS62A~82B ※エレベータ用素線には、SWRH37~47を使用 |
(2)表面処理の材料 | 亜鉛 |
(3)心鋼の材料 | サイザル麻、ジュート麻、マニラ麻、綿糸等の天然繊維と、ポリプロピレン、ナイロンなどの合成繊維 |
(4)ロープグリース | 赤ロープグリース、黒ロープグリース、特殊ロープグリース(低温用ロープグリース、高温用ロープグリース、リフト用ロープグリースなど) |
また「ストランドの数と形」「ストランド中の素線の数と配置」「繊維心入りか」「鋼心(ワイヤロープ心)入りか」等によってワイヤロープの構造は変化します。
ワイヤロープのより方には「普通より」と「ラングより」の2種類があります。
ロープのより方向とストランドのより方向が違うものを「普通より」、同じものを「ラングより」と呼びます。
さらに、ストランドをよる方向によって、「Zより(左より)」と「Sより(右より)」があります。
「ロープのより方向」と「ストランドのより方向」が逆方向に撚られています。
素線はロープ軸にほぼ平行であり、キンクしにくく、取り扱いが容易。
よりが締まり、形崩れしにくいという特長があります。
ただし耐摩耗性と耐疲労性はラングよりに劣ります。
「ロープのより方向」と「ストランドのより方向」が同一方向に撚られています。
表面に現れている素線は長く、耐摩耗性に優れています。柔軟で耐疲労性も良好です。
一方でロープの自転性(トルク)が大きく、キンクを生じ易いという側面もあります。
ロープのより方別特性の比較
項目 | 普通より | ラングより |
---|---|---|
外観 | 素線はロープ軸にほぼ平行。 | 素線はロープ軸に対してある角度をなす。 |
利点 | キンクしにくく、取扱いが容易。 よりが締り、形くずれしにくい。 | 表面に現れている素線は長く、耐摩耗性に優れている。また柔軟で耐疲労性も良い。 |
欠点 | 耐摩耗性と耐疲労性はラングよりに劣る。 | ロープの自転性(トルク)が大きく、キンクを生じ易い。 |
つまりワイヤーロープの撚り方向は、ロープのより方向「2種」とストランドのより方向「2種」が組み合わされ、「普通Zより」「普通Sより」「ラングZより」「ラングSより」の4種類となります。
ストランド | ロープ | |
---|---|---|
普通Zより | Sより | Zより |
普通Sより | Zより | Sより |
ラングZより | Zより | Zより |
ラングSより | Sより | Sより |
ワイヤーロープの形崩れの一種です。
ワイヤーロープが「捻じれ」と「緩み」を同時に受けてもつれている状態で、さらに引張荷重を受けた場合に生じる塑性変形のことを言います。
この状態のまま使用を続けるとワイヤーロープが切れやすくなります。
別称「いわし」と呼ばれることがあります。
キンクはワイヤーロープの形崩れの最悪状態で致命傷です。
一旦キンクが発生するとその損傷は永久的で、外観は直ったように見えていてもそこが弱点となり加速度的に損傷します。
キンクには下記の2種類があります。
キンクがワイヤーロープの形崩れの最悪な状態というのは前述でもお伝えした通りですが、それならば「直せばまだ使えるのでは」と考えてしまうでしょう。
ですが一度キンクしたワイヤーロープは強度が低下してしまいます。
もしキンクを直し見た目が元通りになったとしても、強度は低下したまま元に戻ることはありません。
以下の表ではワイヤーロープのキンクと強度低下率を記載しています。
ワイヤーロープの状態 | 強度低下率 |
---|---|
キンクを直したロープ | 約20% |
プラスキンク | 20~45% |
マイナスキンク | 35~60% |
キンクを直した場合でも、強度が約20%低下しています。
キンクの度合いによってはさらに強度が低下しています。
その為キンクしたワイヤーロープは、誤って使用されないためにもすぐに廃棄しましょう。
一度キンクが生じるとその損傷は永久的です。
前述の通り外観では直ったように見えていても、そこが弱点となりワイヤーロープは早く傷んでしまいます。
最悪の場合ワイヤーロープが切れてしまう恐れがありますので早急に交換を行うようにしましょう。
リフトやエレベーターを吊り下げているワイヤーロープは、1本1本の細い線材を合わせた素線と呼ばれるロープを6~8本束ねて構成されています。
この1本1本の細い素線が切れる状態を素線切れといいます。
ワイヤーロープは消耗品のため、エレベーターを長く使用していると経年劣化や摩耗によりワイヤーロープの素線切れが発生します。
1本素線切れが発生すると他の素線に負荷がかかってしまうため突然の破断に繋がります。
素線切れが悪化するとワイヤーロープが切れ、かごが落ちてしまう危険性が出てきます。
素線の数は、ワイヤーロープの種類によりますが基本的には6~8本です。
ワイヤロープは使用しているうちに、素線が少しずつ切れて強度が低下します。
1本素線切れが発生すると、残った素線で荷重を支えることになり、各素線一本あたりの荷重が増えてしまい寿命も一気に短くなります。
そのまま使用を続けるとワイヤーロープの強度は著しく低下し、定格荷重より小さな荷重でもワイヤーロープが切れてしまうようなことが発生します。
万が一ワイヤーロープが切断してしまった場合、修理業者との日程調整が必要になり復旧にも時間がかかります。
そのようなことにならない為にも定期的なメンテナンスをすることをおすすめします。
通常は、安全のため素線切れが発生する前にワイヤーロープを交換することをおすすめします。
消耗品であるワイヤーロープは遅かれ速かれ定期的に交換する必要があります。
素線切れ以外にも錆や伸び、損傷状態などでワイヤーロープの劣化を判断する基準があります。
定期的にメンテナンス・保守点検をしていると素線切れを早期発見し、ワイヤーロープが切れてしまう前に交換することも可能です。
ワイヤーロープの交換機準(廃棄基準)は下記になります。
キンク | 局部的にキンクが発生したり、キンクを直したもの。 |
---|---|
つぶれ | ワイヤーロープのつぶれた部分(短径)が、長径の2/3以下になったもの ※ワイヤーロープつぶれによる廃棄 = 長径 ÷ 短径 ≧ 1.5 |
腐食・錆 | 腐食により素線表面にピッチングが発生してあばた状になったもの。素線がゆるんだもの。 ※ピッチング:腐食された箇所に小さな穴ができたり、穴状になること |
摩耗 | 素線と素線の隙間がなくなったもの。摩耗による直径の減少が公称径の7%を超えるもの。 例:ワイヤーロープΦ12mm の場合、公称径の93%のΦ11.16mmより細くなったものは廃棄 |
うねり | 著しくうねっているもの。うねりの高さがワイヤーロープ径の 4/3 以上になったもの ※ワイヤーロープうねりによる廃棄 = うねりの高さ ÷ ワイヤーロープ径 ≧ 4/3 例:ワイヤーロープΦ16㎜の場合、うねりの高さが21.3㎜以上のものは廃棄 |
ストランドの 落ち込み・浮き | ストランドの落込み、飛び出し、かご状のものがあるもの。 |
きず | 有害な欠陥が認められるもの。 |
その他 | 素線の飛び出し・心鋼のはみ出し・曲がりのあるもの |
クラウン断線 (山切れ) | ワイヤーロープ径の6倍(約1ピッチ)の範囲内の断線数を数え、ワイヤーロープの構成毎に許容指定されている断線数以上あるもの。 |
ニップ断線 (谷切れ) | 1本でもあるもの。 |
形くずれ | 形くずれによって、キンク及び著しい偏平化、曲がり、かご状などの欠陥が生じたもの |
いかがだったでしょうか。
様々な分野で活用できるワイヤーロープは、非常に高い強度と柔軟性を備えています。
しかし色んな負荷を耐え抜くワイヤーロープだからこそ、キンクが発生したり傷が発生したりするとその強度が低下してしまい非常に危険です。
ワイヤーロープの交換基準を守らずに使用を続けていると、素線切れが発生し最悪の場合破断することもあります。
落下などによる事故を引き起こすことがないように、定期的にメンテナンス・保守点検を行い、ワイヤーロープが切れてしまう前に交換しましょう。
また、弊社でワイヤーロープの素線を交換した事例もございますので、ご参考いただければと思います。
※弊社が運営しておりますメンテナンス・保守点検サイトに移動します。