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昇降機の豆知識

投稿日 2023/12/02
更新日 2026/02/04

エレベーター管理の費用相場と義務|安く安全に維持する契約の選び方

エレベーター管理の費用相場と義務|安く安全に維持する契約の選び方

「毎月支払っているエレベーターの管理費、もう少し安くならないだろうか?」
「管理会社から契約更新の見積もりが届いたけれど、この金額は本当に適正なのかな?」

ビルオーナー様や管理組合の理事長様にとって、エレベーターの維持管理費は頭の痛い問題です。
建物の安全を守るためには欠かせない経費ですが、固定費として家計や収益を圧迫しているのも事実でしょう。

しかし、「安くしたいけれど、安かろう悪かろうで事故が起きるのは絶対に避けたい」というのが本音ではないでしょうか。
また、管理者として守るべき法的な義務を正しく理解できているか不安に感じている方も多いかもしれません。

この記事では、エレベーター管理の専門家が、管理者が知っておくべき法的な責任と、管理費用の適正相場について分かりやすく解説します。
さらに、安全性を維持したままコストを2〜5割削減するための賢い契約の選び方もご紹介します。

正しい知識を身につけ、無駄のない安全なエレベーター管理を実現しましょう。

目次

エレベーター管理者が知るべき法的義務と責任

エレベーターの管理には、所有者や管理者に課せられた法的な義務があります。
まずは、「何もしなければ法律違反になってしまうこと」を正しく理解し、安全管理の土台を固めましょう。

建築基準法第8条・第12条に基づく「維持保全」と「定期検査報告」

エレベーターの所有者(ビルオーナーや管理組合)には、建築基準法によって主に2つの大きな義務が課せられています。

  1. 維持保全の義務(第8条)
    建物の所有者・管理者は、その建築物や建築設備(エレベーター含む)を、常に適法な状態に維持するよう努めなければならないと定められています。
    つまり、「壊れたら直す」だけでなく、事故が起きないように日頃から点検や整備を行う責任があります。

  2. 定期検査報告の義務(第12条)
    特定行政庁が指定する建築設備(エレベーターなど)の所有者は、年に1回、専門の資格者による検査(法定検査)を受け、その結果を行政庁へ報告しなければなりません。
    これは車でいう「車検」にあたる重要な手続きです。

毎月の「保守点検」と年1回の「法定検査」の違い

ここが非常に混同しやすいポイントですが、エレベーターの点検には「保守点検(メンテナンス)」と「法定検査(定期検査)」の2種類があります。

項目保守点検(メンテナンス)法定検査(定期検査)
目的故障の予防、性能維持、寿命の延伸法的基準を満たしているかの確認
法的義務努力義務(建築基準法第8条に基づく)報告義務あり(建築基準法第12条)
頻度一般的に月1回〜数ヶ月に1回年1回
実施者保守点検業者(管理会社)建築設備検査員などの国家資格者
位置づけ車の健康診断や日常のケア車の車検のような法律で決まっている検査

保守点検は、メーカーやメンテナンス会社と契約を結び、毎月または隔月で行う点検です。
機器の清掃、注油、調整、消耗品の交換などを行い、エレベーターが安全に動く状態をキープするために行います。

一方、法定検査は、あくまで「今の状態で法律に適合しているか」を行政に報告するための検査です。

重要なのは、「法定検査だけ受けていれば良いわけではない」という点です。
日々の安全を守るためには、専門業者による定期的な「保守点検」が不可欠です。

管理を怠った場合のリスク・罰則と事故時の責任

もし、これらの義務を怠ってエレベーターの管理を放置したり、虚偽の報告をしたりした場合はどうなるのでしょうか。

まず、建築基準法違反として100万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
しかし、それ以上に恐ろしいのが事故が起きた時の責任です。

万が一、適切な管理を怠ったことが原因で人身事故が発生した場合、所有者や管理者は「業務上過失致死傷罪」などの刑事責任を問われるだけでなく、被害者に対する多額の損害賠償責任(民事責任)を負うことになります。

「管理会社に任せきりだったから知らなかった」という言い訳は通用しません。
所有者自身が主体的に管理に関わることが、リスク回避の第一歩です。

エレベーター管理費(保守点検費用)の適正相場

「法的な義務は分かったけれど、毎月の管理費が高すぎる気がする…」

ここでは、多くのオーナー様が気にされている費用の相場について解説します。
実は、依頼する会社の種類によって費用は大きく異なります。

【比較表】メーカー系と独立系保守会社の費用相場

エレベーターの保守会社には、エレベーターを製造したメーカーの系列会社である「メーカー系」と、メーカーに関わらずメンテナンスを専門に行う「独立系」の2種類があります。

一般的な月額費用の相場(エレベーター1基あたり)は以下の通りです。

契約形態メーカー系管理会社独立系管理会社
(アイニチ等)
POG契約月額3万円~5万円月額1.5万円~
フルメンテナンス契約月額5万円~7万円月額4万円~
※エレベーターの機種によっても費用は変動するので、詳しくはメンテナンス会社に確認が必要です。

ご覧の通り、独立系管理会社の方が、メーカー系よりも2割〜5割ほど安くなる傾向があります。
例えば、月額で2万円違えば、年間で24万円、10年では240万円もの差が生じることになります。

POG契約とフルメンテナンス契約の価格差

相場表に出てきた「POG」と「フルメンテナンス」は、保守契約の種類の名前です。

POG契約
(パーツ・オイル・グリス)
点検費用と、消耗品(オイル、ヒューズ、電球など)の交換費用のみが含まれる契約です。
高額な部品交換や修理が発生した場合は、その都度別途請求されます。
月額費用は安く抑えられます。
フルメンテナンス契約点検費用に加え、部品の交換や修理費用も月額料金に含まれている契約です(※一部対象外部品あり)。
突発的な修理費が発生しにくいため予算管理が楽ですが、月額費用は高めに設定されています。

管理費が高くなる要因と適正化のポイント

管理費が高止まりしてしまう主な要因は、「新築時からずっと同じメーカー系会社と、言われるがままに契約更新を続けていること」にあります。

メーカー系はブランド力や安心感がありますが、その分、広告宣伝費や開発費などが価格に上乗せされています。
また、競合との比較検討がされないため、価格競争が起きにくく、高めの設定のまま維持されがちです。

コストを適正化するためには、「現在の契約内容が建物の状況に合っているか見直すこと」と、「独立系を含む複数の会社から相見積もりを取ること」が最も効果的です。

コストと内容で選ぶ!2つの契約形態の判断基準

「POG契約」と「フルメンテナンス契約」、どちらを選ぶべきかは、建物の築年数やオーナー様の考え方によって変わります。
それぞれの契約に向いているケースを見ていきましょう。

「POG契約」が向いているケース(築浅・コスト重視)

POG契約がおすすめなのは、以下のようなケースです。

  • 築年数が浅い(設置から15年未満)
    エレベーターが新しいうちは故障が少なく、部品交換の頻度も低いため、フルメンテナンス契約の恩恵を受けにくい傾向があります。
  • 毎月の固定費(ランニングコスト)をとにかく下げたい
    月々の支払いを抑え、修理が必要になった時だけ実費を支払う方が、トータルコストが安くなる場合が多いです。
  • 利用頻度が低い建物
    利用回数が少なければ部品の摩耗も遅いため、POG契約で十分対応可能です。

「フルメンテナンス契約」が向いているケース(築古・予算平準化)

一方、フルメンテナンス契約がおすすめなのは以下のケースです。

  • 築年数が経過している(設置から20年以上)
    経年劣化により故障のリスクが高まり、部品交換が増えてくる時期です。
    修理費が込みになっている契約の方が安心感があります。
  • 突発的な出費を避けたい(予算の平準化)
    「今月急に修理代で30万円必要になった」といった事態を避け、毎月の支払額を一定にして予算計画を立てやすくしたい場合に適しています。
  • 管理の手間を減らしたい
    修理のたびに見積もりを確認して決裁する手間を省けます。

管理費を安くするなら「独立系」への切り替えが有効

管理費削減の最も確実な方法は、メーカー系から「独立系メンテナンス会社」へ契約を切り替えることです。
しかし、「安いけど大丈夫なの?」と不安に思う方もいらっしゃるでしょう。ここでは独立系の実態について解説します。

メーカー系と独立系のメリット・デメリット比較

特徴メーカー系管理会社独立系管理会社
メリット・自社製品への深い知識
・大手ならではのブランド安心感
管理費が安い(適正価格)
メーカー問わず対応可能
顧客に合わせた柔軟な提案
デメリット管理費が高額になりがち
・他社製エレベーターには対応不可
・会社によって技術力に差がある
・部品調達に時間がかかる場合がある(※会社による)

なぜ独立系はメーカー系より2〜5割も安いのか

独立系が安い理由は、「手抜きをしているから」ではありません。
主に以下の理由による企業努力と構造の違いです。

  1. 中間マージンや「看板料」がない
    メーカー本体への上納金や、テレビCMなどの巨額な広告宣伝費がかかっていないため、純粋なサービス費用のみで提供できます。
  2. 効率的な運営
    地域密着型で移動コストを削減したり、メーカーにとらわれず安くて品質の良い部品を選定したりすることでコストを抑えています。
  3. 過剰なサービスを省く
    例えば、「夜間は誰も使わない工場」のエレベーターであれば、過剰な24時間の有人待機コストを省くなど、お客様の実際の稼働状況に合わせた無駄のないプランを提案できるため、結果として安くなります。

「安かろう悪かろう」ではない!独立系の技術力と安全性

「独立系は技術力が低いのでは?」という懸念は、過去の話になりつつあります。

現在、信頼できる独立系メンテナンス会社は、メーカー系出身のベテラン技術者を多く抱えており、メーカー純正と同等の検査機器や補修部品を保有しています。

また、「独立系だからこそ、メーカーのしがらみなく、お客様にとって一番良い修理方法(部品交換で直すか、修理で直すか)を提案できる」という強みもあります。

メーカー系では「新品への交換」一択になりがちな場面でも、独立系なら「使える部品は残してコストを抑える」といった柔軟な対応が可能です。

独立系メンテナンス会社を選ぶ際の重要チェックポイント

独立系会社の中にも、技術力や対応力には差があります。
安心して任せられる会社を選ぶために、以下のポイントをチェックしましょう。

メーカー純正部品や同等品の調達能力

エレベーターの安全確保には、適切な部品交換が欠かせません。

主要メーカーの純正部品を入手できるルートを持っているか、あるいは信頼性の高い同等品(リビルト品など)を調達できるかを確認しましょう。
多くの優良な独立系会社は、独自のネットワークで部品を確保しています。

有資格者の在籍数と技術力の証明

「昇降機等検査員」などの国家資格を持つ技術者がどれくらい在籍しているかは、技術力の目安になります。
また、創業年数や管理実績(管理台数)も信頼性の指標です。
長年事故ゼロで運営している会社であれば、より安心です。

見積もりの透明性と親身な対応・提案力

見積書の内訳が明確で、なぜその金額になるのかを丁寧に説明してくれる会社を選びましょう。

また、「あなたの建物の使い方」に合わせて親身に提案してくれるかも重要です。
ただ安さを売りにするだけでなく、「夜間は稼働が少ないなら、このプランでコストを下げられますよ」といった、無駄を省くための具体的な提案がある会社は信頼できます。

エレベーター管理に関するよくある質問

最後に、メーカー系から独立系への切り替えを検討する際によくある疑問にお答えします。

Q. メーカー以外だと部品が手に入らないというのは本当か

A. いいえ、そんなことはありません。

かつてはメーカーが部品の供給を独占するような動きもありましたが、現在では独占禁止法の観点や業界の流れにより、独立系業者であっても主要な部品は入手可能です。

また、アイニチのように、メーカー問わず様々な機種の部品調達ルートを確保している会社であれば、修理対応に支障が出ることはありません。

Q. 契約期間中でも管理会社の変更は可能か

A. はい、可能です。

現在の管理会社との契約内容によりますが、一般的には契約満了の3ヶ月〜1ヶ月前に解約予告通知を出せば解約できます。

中には「違約金」が設定されている契約もありますが、新しい管理会社のコスト削減分で十分にカバーできるケースも多いため、まずは契約書を確認し、相談してみることをおすすめします。

Q. 古いエレベーターでも独立系で管理できるか

A. はい、管理可能です。

むしろ、古いエレベーターこそ独立系の強みが活きる場面です。

メーカー系では「部品がないのでリニューアル(全交換)しかありません」と言われるようなケースでも、独立系なら独自の技術と部品在庫を駆使して、修理で延命したり、使える部分を残した低コストなリニューアル(制御リニューアルなど)を提案したりすることができます。

まとめ

エレベーター管理において重要なのは、法的な義務をしっかりと果たしながら、建物の状況に合わせた「適正なコスト」で維持することです。

  • 管理者の義務: 月1回の保守点検と年1回の法定検査は必須。
  • 費用の相場: 独立系はメーカー系よりも2割〜5割安い
  • 契約の選び方: 築浅ならPOG、築古ならフルメンテが基本だが、柔軟な見直しが重要。

「長年メーカーにお任せで、一度も見直したことがない」というオーナー様は、ぜひ一度、現在の契約内容が適正かどうかを確認してみてください。

アイニチ株式会社では、お客様のエレベーターのご利用状況に合わせて、無駄を削ぎ落とした最適なメンテナンスプランをご提案しています。

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