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昇降機の豆知識
エレベーターにも明確な寿命があることをご存じでしょうか。
機械なのでいずれは経年劣化に伴い故障はするだろうという認識の方が多いのではないでしょうか。
エレベーターには「耐用年数」と呼ばれる寿命が決められています。
この耐用年数は、エレベーターの使用状況や周囲の環境、メンテナンスの適切な実施などによって大きく左右されます。
エレベーターは日常生活において利便性が高く、毎日多くの人が利用しています。
そのため寿命が来る前にタイミングを見計らって、リニューアルの計画を立てる必要があります。
旧式のエレベーターでは耐用年数が短くなる場合もありますので特に注意が必要です。
この記事ではエレベーターの耐用年数について確認し、リニューアルの種類やタイミングについて解説します。
目次
エレベーターメーカーが明記する耐用年数、いわゆるメーカー公表年数は多くが「20年~25年」とされています。
エレベーターはメンテナンスのみで永久に使い続けることは不可能で、いずれリニューアル工事が必要な設備です。
エレベーターの寿命は、メーカーが公表している年数以外にも以下のような「耐用年数」として定められています。
法定耐用年数 | 耐用年数「17年」 エレベーターの機能を使い切る(減価償却する)までの寿命 |
計画耐用年数 | 耐用年数「25年」 エレベーターが物理的に使えなくなるまでの寿命 |
法定耐用年数とは、税法上の固定資産価値を表した年数です。
法定耐用年数は、種類・用途ごとに法令(減価償却資産の耐用年数等に関する省令)で細かく定められており、減価償却費の計算の基礎となります。
固定資産とは1年以上保有する資産のことを指します。
以下の条件を満たすものが固定資産に該当します。
固定資産の具体例としては、土地や建物・車両・オフィスのデスクやパソコンなどです。
また、営業権利や施設権利など形のないものも固定資産に含まれます。
固定資産を経費処理する際は、減価償却を採用します。
減価償却とは、固定資産の購入時に発生した費用を耐用年数で均等に分割して計上していく会計方法のことを指します。
固定資産は何年にもわたり使用する目的で導入しているとみなされるので、購入した年に一括で経費として処理するのではなく、毎年少しずつ資産の価値が減少していくという考えに基づく処理方法です。
計画耐用年数とは、物理的な寿命を表した年数です。
計画耐用年数は、BELCA(公益社団法人 ロングライフビル推進協会)のLCC(ライフサイクルコスト)評価指針で定められています。
エレベーターには建築基準法第8条において、
「建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない」と定められています。
つまり、誰もが安全に利用することができるように年に1回の定期検査(法定検査)を行い、自治体に届け出ることが義務付けられています。
さらに一般的には1ヵ月に1回、任意の定期点検も行っています。
適切な点検や部品交換など定期的なメンテナンスを実施することにより、耐用年数を大幅に引き延ばすこともできます。
エレベーターのメンテナンスには、「FM契約」と「POG契約」という2つの契約形態があります。
FM契約とは「フルメンテナンス契約」の略称です。
FM契約は、エレベーターのメンテナンスにおいて部品交換や修理の費用など全てが含まれる契約です。
通常使用において、通常故障発生すると予測される部品の交換、修理費用が含まれています。
そのため、保守料金は高めに設定されています。
部品交換・修理の際に必要な「見積り確認」「契約」「支払い」の手間が省けます。
またエレベーターの保守費用が一定なので、年間の費用を把握しやすく経理上の処理が容易です。
POG契約とは「パーツオイルグリス契約」の略称です。
POG契約は、エレベーターのメンテナンス費用に部品交換・修理の費用が含まれない契約です。
一定範囲内の消耗品の交換はメンテナンス費用に含まれますが、それ以外の部品交換や修理は、別途契約・費用が発生します。
部品交換・修理の費用が含まれていない分、メンテナンス費用を安く抑えられます。
またメンテナンス費用と部品交換・修理の費用が分かれているため内訳が明確になります。
※修理に備えて予算を計上しておく必要があります。
前述の通り、エレベーターは誰もが安全に利用することができるように年に1度の法定検査や定期点検などのメンテナンスを定期的に行っています。
しかし適切なメンテナンスを行っていても、使用部品の摩耗や劣化あるいはパーツの製造中止など、物理的な理由によって性能を維持することが困難になります。
また、耐震性の強化など様々な社会的要求の変化や法令改正等により、エレベーターに求められる機能や性能も年々変化しています。
以前では安全とされていたものでも、今の基準では及んでいないというようなこともあるでしょう。
より安心安全で快適にエレベーターを利用していただくためには「エレベーターのリニューアル」が必要になるのです。
エレベーターの寿命は、耐用年数などによりある程度は決められていますが、リニューアルを行う際にはそのタイミングについて考えておく必要があります。
ベストなタイミングでリニューアルが行えるように、いくつか目安となるものをご紹介します。
耐用年数を迎えたエレベーターは、リニューアルを実施するには最も一般的なタイミングです。
法定耐用年数、計画耐用年数など細かな違いはありますが、約20年~25年程をひとつの目安にしましょう。
一般的なマンションでは、通常12年周期で大規模修繕計画が立てられているため、その2回目に当たる24年目の年に、エレベーターのリニューアルを同時に実施する事が多いです。
経年劣化による故障やトラブルが頻発しリニューアルに踏み切るパターンも見られます。
多くの場合は、エレベーターを長期間使用することで各部の劣化が見られるようになります。
経年劣化により接触不良や断線、その他電気系統に関するトラブルなどが増えていきます。
このような経年劣化は、通常のメンテナンスを継続していても完全に防止することはできません。
そのため経年劣化が目立つようになってきた場合は、リニューアルを優先すべきタイミングだと言えるでしょう。
エレベーターの生産中止や、パーツの供給が終了してしまいリニューアルを検討するケースです。
この場合エレベーターの故障に対応することができず、メンテナンスが不可能となってしまうため「今はまだ稼働しているが、故障前にリニューアルしよう」となることがよくあるパターンです。
通常は、エレベーターが生産中止になっても20年程度は保守用パーツ供給義務がメーカーに生じます。
設置のタイミングによっては耐用年数前に供給義務の時期が終了してしまう場合もあります。
現行のエレベーターから、安全性利便性を向上する目的でリニューアルを検討するケースです。
最新のエレベーターになると性能や省エネ効果の向上が見込めたり、安全性・耐震性に関する最新の法規にも適合可能になります。
時代の変化に合わせた性能・機能を盛り込むことで、利便性や快適性が大幅に向上します。
エレベーターのリニューアルには以下の3種類があります。
既存のエレベーターや関連機器・付属物を全て撤去し、エレベーターを新設するリニューアル方式です。
この方式は、準撤去リニューアルや制御リニューアルと比べ、長い工期を必要とします。
全ての関連機器を新設するので、現行法令への適合、つまり既存不適格の解消が可能です。
総取替することにより劣化の悪影響を根本的に解決できるため、その後の利用可能期間は長くなります。
ただし、工事期間が長く、工事費用も高く、工事中の騒音・振動が大きく発生するなどの部分には注意が必要です。
エレベーターの新設になるため、建築確認申請が必要となります。
建物各階に設置されている既設機器(三方枠や敷居、ガイドレール等)は活用し、それ以外に該当する機器(かご室・釣合おもり・制御盤・巻上機等)を取り替えるリニューアル方式です。
全撤去新設リニューアルと比べると、その後の利用可能期間は劣りますが、工事期間が短く、工事費用も安く済みます。
既存のエレベーターに合わせた部品の調達が必要になる為、状況によっては時間がかかる場合があります。
またリニューアル後、交換部分と非交換部分との工事タイミングの兼ね合いなどに注意する必要があります。
エレベーターの制御関連機器(制御盤、電動機等)を中心に取り替えるリニューアル方式です。
車いす兼用仕様、地震時管制運転、停電時自動着床装置など、必要に応じた機能や使用を追加することも可能です。
工事期間が短く、工事費用も安いため、経済性の観点から考えるともっとも優れる方式となります。
しかし、エレベーターの多くの部分が古いままになるため、入れ替える機器の内容によっては、「既存不適格」が解消されない場合があります。
リニューアル施工時の主だった注意点をまとめました。
既存不適格のエレベーターであっても、確認申請が必要なリニューアルを実施する場合は、現在の法令に適合させる必要があります。
現行のエレベーターを確認し、状況に応じたリニューアルを実施しましょう。
リニューアル工事期間中はエレベーターが使用できなくなることがあります。
複数のエレベーターがある場合は、順番に工事を進めていくことで原則として1台のエレベーターは使用可能ですが、エレベーターが1台の場合は、工事期間中はエレベーターが全く使用できなくなります。
そのためエレベーターが使用できなくなる期間の住民対応をあらかじめ検討しておく必要があります。
リニューアルにおいてどこまでをリニューアルすべきなのかをしっかり検討する必要があります。
リニューアルにはもちろん費用が発生しますので、費用に対してどの程度の効果が見込めるのか、費用対効果を考慮して選択する必要があります。
自然災害(地震)などが発生すると、エレベーターが停止してしまったり、扉に挟まれたり、閉じ込め事故などの被害が起こる可能性があります。
このような自然災害によるエレベーター事故は過去にも幾度となく発生しています。
過去の地震被害の経験や建築物の構造変化において機能維持・安全保障という観点から基準が構築され、エレベーターには法律によって耐震基準というものが設けられています。
耐震基準は時代と共により安全性の高い基準に変遷していますが、既存不適格のエレベーターでは最新の耐震基準には満たしていないことになります。
「人命最優先・安全走行」を目的とした09耐震基準以前のエレベーターは特にリニューアルをおすすめしています。
09耐震基準に関しては『09耐震とは?時代と共に移り変わるエレベーターの耐震基準の在り方』を参考にしてください。
いかがだったでしょうか。
エレベーターの耐用年数やリニューアルについて解説いたしました。
エレベーターには耐用年数という寿命が設けられています。
特に使用年数が20~25年経過したエレベーターは、各種部品や機能劣化が進んでいるため突然故障する可能性も高くなります。
またエレベーターのパーツ供給が終了してしまうこともあるため、20~25年を目安に、あらかじめエレベーターのリニューアルを計画しておくことをおすすめします。
エレベーターを安全・快適に利用できるようにするためにも、正しい知識を持って、メンテナンスやリニューアルに臨みましょう。
リニューアルに関して気になる点がございましたら、ぜひお気軽にアイニチ株式会社までご相談ください。
また、弊社が運営しておりますメンテナンス・保守点検サイトでも情報を発信しておりますので、ご活用いただけますと幸いです。